婚礼家具という名で両家を結んできた家具がありました。
送り手の祈りが込められた重厚な箪笥の中は、両家の末長い絆を約束する品々が収められ嫁ぐ先に手渡されました。
当時婚礼家具はわたしたちも含め、家具販売店に多くの利益を持たらせました。
しかし時は経ち、家督や家族のあり方が少しずつ変化をみせた頃、家具の形も変わっていきました。
数年に一度しか紐解かれない品はこれまでとは違う形で収納され、
核家族化によって狭くなった空間がさらに家族団欒のために大きく解放されるようになった時、
わたしたちは家具の本当の価値や意味をもう一度考える機会を得ました。

もし太陽家具が、そのような慣習や文化の大きな転換期の中でも
西日本一帯の主要な家具店としてお客さまに愛され続けていたとすれば、
その理由は、その家の中心で暮らす人々の姿や、その横で家具が寄り添い、癒し、役立つそんな姿を
ずっと思い描きつづけて来たからかもしれません。
この四半世紀で家具のフォルムは随分シンプルな方向へと変化していきました。
それは単に造形的な単純さではなく、家具を使う人の社会的、精神的な「自立」によって、
家具の役割や所有する意味が簡潔になったということではないでしょうか?

子が親から、家庭の主婦が家の主人から自立し、家長が家族と同じ目線で「居間」という空間を共有しようした時、
テーブルは上座がなくなり丸みを帯びてきました。
椅子は身長や体型にかかわらず、家族誰もが心地よく座れる設計を求められるようになりました。
父親のパーソナルチェアが表現するのは威厳ではなく、シンプルにその日の疲れを癒す十分な機能美であり、
ソファーは中心の無い、みんなで顔を見合わせながら語り合えるレイアウトになりました。

2016年太陽家具は、今一度家族のための家具の在り方を考え整理するために8つのカテゴリーを設けました。
それぞれのアイテムをコーディネートし、それをカセットと名付けることで
お客さまに私たちの思いがよりわかりやすく見えるような工夫をしました。太陽家具のこれからにご注目ください。
古来大陸から強い影響を受けた日本が、独自の美意識を持つにいたったのは16世紀、
西洋はおろか中国さえ見向きもしなかった中国製の三文古美術品の中に
独自の「景色」を見出し茶の湯に重く用いたことに始まったと言われています。
中国で評価されなかった牧谿や天目茶碗はその後日本人の解釈により
「からもの」として世界的価値を認められることになります。
明治維新後の舶来ものもまた、日本人の確かな審美眼によっていわゆる輸入品を超えた存在になりました。
それは昭和のセレクトショップの隆盛へと続き、家具における昨今の北欧ブームも
「和の静寂」というフィルターを通してこその開花だと感じます。

そして太陽家具も、いわゆる高額で著名なインポートものを陳列するのではなく、
そこにわたしたちならではのマーケティングや経験、地域性といった要素を取り入れ、
お客さま家族にとって、そして和の住まいにとって本当に何が価値がありリーズナブルな家具なのかを問い続け、
世界から価値ある家具だけを輸入することに日々努めています。